top of page

西吉野村民プール

2001
​奈良県五條市(旧西吉野村)

日常の中のリゾート​

 山間の小さな集落に位置する村民のためのプールである。従前の村民プールの老朽化に伴い移転・新設することとなった。新しい敷地には、周囲を山や畑の緑・石垣のある民家などに取り囲まれた、河川沿いの小さな柿畑が選ばれた。学校教育用に利川するため25mプールを設置すること、また夏休み期間中は一般村民に開放されるため広い年齢層の利川に配慮することが求められた。
 最初はこの場所に矩形のプールを挿入することに違和感があったが、 むしろこれを逆手に取り、 周りの集落景観と対照しこれを際立たせるような、やや異質で印象的な場をつくろうと考えた。いわば身近にある「リゾート」のような、 日常を少し離れて大人も子供ものんびりと夏のひとときを過ごせるような、そんな場所にしたかった。
 施設のデザインに際しては、虚飾を排した静諦なものを心がけた。水際のラインを極力シンプルにおさめるために、既製品を避けステンレス加工によるプールとした。色もやや深めのブルーとし、ラインの替わりに白と赤のドットで塗り分けて、控えめながら個性的な雰囲気に仕上げている。床はグレーの御影石張りとして所々に梅の花柄を浅く彫り込んだ。隣接する賀名生梅林にちなんだものである。管理上必要な柵類は、視覚から消し去ることを意図してフラットバーで制作した。更衣管理棟は板張りの小屋風にし、 ファサードルーバーの角度変化による陰影で表情を出している。また軒を前面に大きく張り出して大人たちの日陰の溜まり場とした。一方、建物と反対側の日当りの良い場所にはデッキチェアを置き、これに合わせて樹木を配して、木蔭が揺れる中でくつろげる場所とした。河川側に擁壁を立てて平場を確保したが、これは対岸の無粋なコンクリート護岸を視界から切り取り、山の緑を間近に感じさせることに一役かっている。
 夏のひとときを過ごしながらふるさとの豊かさを再認識できるような場になれば幸いである。

掲載:日本造園学会造園作品選集2004 No.7

設計:ヘッズ

​設計主任:吉武宗平(ヘッズ)

  • White Facebook Icon
  • White Twitter Icon
  • White Google+ Icon
  • White Instagram Icon
bottom of page